司馬遼太郎 短編小説 「伊達の黒船」

趣味雑記

作家の司馬遼太郎さんをご存知でしょうか。

大正12年(1923年)に大阪で生まれ、昭和35年(1960年)に「梟の城」で直木賞を受賞、その後、「竜馬がゆく」「国盗り物語」「関ヶ原」など数々の歴史小説を世に出した方です。

その司馬遼太郎の短編小説である「伊達の黒船」をご紹介します。

ネタバレしないように紹介したいと思います。

主人公

嘉蔵(かぞう)

伊達家宇和島に住んでいる「裏借家人」という最下級の身分のもの。いわゆる「甲斐性なし」の男であまりにも貧乏で妻にも愛想を尽かされて逃げられた。唯一の取り柄は恐ろしく手先が器用で、特に提灯の張替えがうまい。42歳になるまで提灯の張替えを仕事としていたが、さほどに稼げるわけでもなく、その日の食事にも困る仕事をしていたが、ひょんなことから藩の一大事業に関わることになる。

物語の全体像

嘉永6年(1853年)黒船が来航した。

当時の日本人は、何よりも自動で動く船に驚愕した。

同時にこの黒船を作ろうとしたものがいた。それが、幕末四賢候の一人である伊予宇和島の伊達宗城である。

自身の領内に黒船を作れる人材はいないかと、家来に探させたところ、主人公である嘉蔵に白羽の矢がたつ。

手先が器用なだけの最下層の身分の嘉蔵が、見たこともない黒船作りに挑戦する物語です。

感想

例えば明日、宇宙人がいわゆるUFOに乗って来た時に、「手先が器用」なだけの人物にUFOの製造を行わせるかというと、なかなかそうは行かないものだと思います。

ましてや当時は身分制度の厳しい時代です。(嘉蔵もこの身分の壁に困りながら奮闘します)

この小説はページ数で40ページ強(私が持っているものは1993年に第35刷で発行された文庫本で文字が小さいです。今の文庫本だともう少しページ数が多いかもしれません)司馬遼太郎さんの小説としては短いもので、非常に読みやすいです。

四賢候と言われた伊達宗城についても、その逸話などが書かれており、また、当時の身分制度の「ややこしさ」・「ばからしさ」・「やるせなさ」がわかる反面、どんな時代にも必ず理解者がいるということがわかります。

この小説は短編集「酔って候」に収録されています。この「伊達の黒船」以外には

「酔って候」(山内容堂を主人公とした短編、山内容堂は坂本龍馬を排出した土佐藩の藩主)

「きつね馬」(島津久光を主人公とした短編、島津久光は西郷隆盛・大久保利通を排出した薩摩藩の藩主)

「肥前の妖怪」(鍋島直正を主人公した短編、鍋島直正は幕末の動乱で佐幕・勤王のどちらにもつかずにいたが動乱期の最後に薩長土と手を組み徳川方を滅ぼし、維新は「薩長土肥」が行ったと歴史に名を残した人物)

と、主に幕末の藩主を題材にした短編が集まったものです。長編小説にはないテンポの早い読みやすさがあるので、ぜひ一度読んで頂ければと思います。

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