以前、社内で「与信管理」をしていました。
「与信管理」って聞きなれない方も多いのではないでしょうか。
新入社員向けに与信管理について講義を行ったこともあり、それも踏まえて与信管理について簡単にまとめてみました。
あなたはどちらに売りたいですか。
あなたはフリーマーケットに出店しています。
目の前に二人のお客様が現れました。
二人はあなたが売っている商品を見て、「買いたい」といいましたが、二人共手持ちのお金が無く「お金は来月払う」とのことでした。
あなたはどちらの方に売りますか?
相手を信用して商品を先に渡すのが信用取引
商品を渡して、お金は来月もらうということは、販売した人が来月お金を払ってくれると信用できなければ売ることはできません。
でなければ、商品だけ渡して、お金はもらえないことになります。
ですが、今売る約束をしなければ、二人共商品を買ってくれないかもしれません。
なのであなたが販売してくれる人を信用する(信用を供与する)ことを与信といいます。
そして、どれくらいの信用を供与するかを管理することを、与信管理といいます。
AさんとBさんの比較
Aさん
Aさんは今月20万円の手取りがありました。
また、サラリーマンということなので、来月も高確率で20万円の収入を得ると考えられます。
今月は収入20万円−生活費15万円=5万円余裕があります。
来月はクレジット支払い3万円がありますが、生活費が今月と同じと仮定すれば、前月繰越5万円+収入20万円−生活費15万円−クレジット支払い3万円=7万円となるため、来月に支払ってもらえるお金は十分に確保できていると思われます。
Bさん
Bさんは今月60万円の手取りがありました。
ですが、日々仕事を請け負っているということなので、来月の収入が不安定で、最悪の場合は0円の可能性もあります。
今月は収入60万円−生活費50万円=10万円余裕があります。
来月はクレジット支払い35万円があります。
どのような生活をしているか判りませんが生活費は急に変わることはないと思いますので、今月と同じと仮定します。
収入に関して不安定なので仮に今月の半分になったとすると、前月繰越10万円+収入30万円−生活費50万円−クレジット支払い35万円=−45万円となるため、もしかしたら来月お金がないかもしれません。
AさんとBさんでは、Aさんのほうが来月支払ってもらえるお金がありそう。
あと、Aさんのほうが、社会的信用も高そうだし、お金の管理もしっかりしてそう。
決算書の分析の例
企業間で取引を行う場合は、相手をどれくらい信用できるかを検討するために、決算書(その会社の成績表)を分析します。
決算書分析は奥が深いのでその全てを記すことはできませんが、代表的なものをあげます。
利益率
利益率は損益計算書(P/L)でわかります。
営業利益率・経常利益率などありますが、要するに、黒字であるか赤字であるかを確認します。
計算式は各利益額÷売上高です。
例えばあなたが手取り20万円で生活費などが19万円である場合利益率は1万円÷20万円=5%となります。
通常は過去3年〜5年間の各年度の利益率を見ていきます。
流動比率
こちらは貸借対照表(B/S)でわかります。
流動資産(1年以内に現金になるもの)と流動負債(1年以内に支払いが必要な金額)を用いてお金に余裕があるかを見ていきます。
計算式は流動資産÷流動負債です。
あなたが貯金5万円で来月20万円手取りがあり、来月の生活費が19万円、クレジットカードの支払いが5万円である場合の計算は、
25万円÷24万円=104%です。
100%を超えているということは、金銭的の余裕があるということで安心できます。
自己資本比率
総資産の内、自分のお金(資産)がどれくらいあるかを表すものです。
例えば、あなたが100万円の貯金と3,000万円の価値がある家と200万円の価値がある車を持っている時、あなたの総資産は合計の3,300万円です。
もしあなたに、住宅ローン2,900万円と車のローン150万円が会った場合、総資産3,300万円の内、3,050万円が返す必要のあるお金(負債)で250万円が自己資本となります。(自己資本は必ずしもお金ではありません)自己資本比率の計算式は
自己資本250万円÷総資産3,300万円=7.6%です。
もしあなたが、住宅ローン2,900万円、車のローン150万円、その他のローンや未払金500万円の場合、負債は3,550万円で総資産3,300万円より負債のほうが多くなります。この状態を債務超過(負債のほうが多い)状態になります。
要は安定した利益があって、お金をもっていて、財産と借金のバランスが良い会社なら安心できるということです。
まとめ
与信管理ではこの他に、借入金の具合・取引銀行数・対象企業の株主・業態(第三セクターか?など)・業界でのうわさなど様々な情報を元にどれほどの与信を与えるかを検討します。
どれほどの与信というのは、例えばいくらまで販売してよいか(いくら分の商品を先に渡すか)などを検討し、場合によっては保証金(予め一定額を預かり、もしも支払いが遅れた場合などは、この保証金から支払ってもらう)などを行います。
一個人が取引を行う時、アマゾンなどのサービスを使えば、与信管理などは行う必要はありません。(アマゾンが支払いなどを行ってくれる)ですが、買ってくれる人と直接商売を行う場合、相手が支払ってくれるか・支払い能力があるかを検討し、売った金額の回収を自分で行う必要が出てきます。
そのような小難しいお話は専門書などで勉強する必要がありますが、基本的には、「相手に先に商品を渡し、お金を後からもらうために、相手をどれくらい信用するか(相手にどれくらいの信用を供与するか)を管理するのが与信管理になります。
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